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自然を尊ぶ表現の美しさ

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  雲や嵐がなければ、いかなる虹もありえない。

  J・H・ヴィンセント
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 江戸時代に陽明学の大家といわれた熊沢蕃山がこんな歌を残している。「雲のかかるは月のため 風の散らすは花のため 雲と風とのありてこそ 月と花とは尊とけれ」。人間には「尊い」とか「敬する」とかいう、他の生きものにはない感情を持ち合わせている。これあってこそ人間が人間たるゆえんなのだ。蕃山は自然の現象の中にもその尊さを見出し、芸術的に表現したところに東洋人ならではの風流がある。雲がかかる月を「雲遮月」といい、薄雲を隔てて、ほのかに月の光が漏れる姿を言う。女性の姿も開けっぴろげに見せられるよりも見えそうで見えないしぐさがエロティックだ。また、もうすぐ花見の季節だが、咲き切った桜の花が風に散る姿は美しく、みずからの人生を映し合わせてそのはかなさを感じるのも味わい深いものだ。「明日ありと思う心の仇桜 夜半に嵐の吹かぬものかは」─人生はいつ中断するかわからない。だからこそ、そのときそのときを生き切りたい。


〈名言209〉



by siva1199 | 2012-03-17 14:09 | 名言365


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